Ubuntu / Mint Linuxへのバイナリインストール#

著者:

稲村泰弘

最終更新日:

Sep, 26th, 2025

対応空蟬リリース:

4.0 or later

概要#

本章では空蟬環境をUbuntu / Mint Linux に対しDebianバイナリパッケージでインストールする方法を示す。

なお、2025年9月末現在で、対応しているビームラインは以下のとおりである。

Available beam lines for Utsusemi debian packages#

BL(code)

注意点

状況

BL01(SIK)

特になし

対応済み

BL02(DNA)

QENSfitは含まず

対応済み

BL11(HPN)

Teuseは含まず

対応済み

BL14(AMR)

特になし

対応済み

BL15(SAS)

Dviewは含まず

対応済み

BL19(ENG)

基本コードのみ

対応済み

動作環境#

本章で使用するパッケージの対象OSは以下の通りである。

Available distributions#

Distribution

Available versions

Available Architecture

Ubuntu Linux

22.04LTS / 24.04LTS

x86_64 (amd64)

Mint Linux

22 / 23

他のOS(CentOSなど)にインストールしたい場合は、CentOS 7 へのインストールマニュアルなどを参照のこと。 .. Ubuntuは、もっとも導入が優しいLinuxディストリビューションの一つであり、必要なライブラリが全てパッケージ化されていることから選択された。

事前の確認事項#

Ubuntu Linux もしくはMint Linuxは既に目的のPCに導入されていることを想定 している。また極力OSで提供されているパッケージを利用するため、そのOSに対応したインストール用レポジトリにアクセスできる、つまりPCがネットに接続された状態にしておくこと。 インストールするためには root 権限が必要である。

古い空蟬(スクリプト版)の削除#

空蝉は、デフォルト設定では、下記の場所にインストールされている。

/opt/mlfsoft/

このフォルダがない場合(空蟬をインストールした経験がない)本節を無視して良い。

なお、過去にDebianパッケージによるインストールを行なっていた場合は 本節を行わずに次に進む こと。次節以降のインストール作業により、自動的に上書き(更新)される。

どのようにインストールされたかわからない場合は以下のコマンドで確認すること。

$ sudo dpkg -l mlf-manyo1

Debianパッケージでインストールされていない場合は下記のように表示される。

$ sudo dpkg -l mlf-manyo1
[sudo] password for hoge:
dpkg-query: no packages found matching mlf-manyo1

この場合、下記のようにフォルダを削除する。

$ sudo rm -rf /opt/mlfsoft

なお、Debianパッケージによってインストールされている場合は以下のように表示される。

$ sudo dpkg -l mlf-manyo1
Desired=Unknown/Install/Remove/Purge/Hold
| Status=Not/Inst/Conf-files/Unpacked/halF-conf/Half-inst/trig-aWait/Trig-pend
|/ Err?=(none)/Reinst-required (Status,Err: uppercase=bad)
||/ Name             Version            Architecture Description
+++-================-==================-============-==========================>
ii  mlf-manyo1:amd64 0.3.4.210713-ubu20 amd64        Manyo Library

こちらの場合、新しいDebianパッケージをインストールすることで上書きされる。

手順の概要#

主な手順としては、以下の通りである。

  • インストール

    • Ubuntu / Mint linuxのレポジトリ情報の更新

    • インストール用スクリプトの実行、もしくは各種パッケージ(mlf-manyo1パッケージ, mlf-utsusemi-with-ugaoパッケージなど)のインストール

  • 環境設定

インストール#

Ubuntuのレポジトリ情報の更新#

Ubuntuのレポジトリ情報を最新にするために、以下のコマンドを実行する。

$ sudo apt update

このステップ以降、インターネットへの接続が必要であるが、このコマンドがエラーなく実行できていれば問題ない。 そのほかWebブラウザなどで確認することもできる。実際のネットワークの設定や、確認方法は割愛する。

インストール手順#

インストール用スクリプト( installUtsusemi_FromDebianPackages.sh )をダウンロードし、root権限で実行する。古いスクリプトがあった場合は削除しておく。

具体的には下記のように行う。

$ rm -f installUtsusemi_FromDebianPackages.sh
$ wget https://cdn.mlf.plus/ce/Utsusemi4/Downloads/installUtsusemi_FromDebianPackages.sh
$ sudo bash ./installUtsusemi_FromDebianPackages.sh
[sudo] password for xxx:

これにより、Ubuntuのバージョン(20.04/22.04)に応じたパッケージファイルの最新版の全てが自動的にダウンロードされ、インストールされる。パッケージファイルは、上記のスクリプトを動作したフォルダ内にダウンロードされ、スクリプト内でroot権限 (sudo)にて実行される。インストール後にこれらのスクリプトやパッケージファイルは削除して良い。

なお、このスクリプトによりインストールされるパッケージは下記の通りである。

List of available debian packages#

パッケージ名

インストール対象

必要なパッケージ

BL

mlf-manyo1

万葉ライブラリ

全BL共通

mlf-utsusemi-with-ugao

空蟬一式(夕顔も含む)

mlf-manyo1

全BL共通

mlf-utsusemi-sas

BL15(大観)データ処理用コード

mlf-utsusemi-with-ugao

BL15

mlf-utsusemi-dna

BL02(DNA)データ処理用コード

mlf-utsusemi-with-ugao

BL02

mlf-utsusemi-eng

BL19(匠)データ処理用コード

mlf-utsusemi-with-ugao

BL19

実際のパッケージファイルの名前は、以下のように、パッケージ名にバージョン、ディストリブーション (ubu20, ubu22) やアーキテクチャ(amd64)などがついた名前となる。

Example names of actual debian packages#

ファイル名の例

mlf-manyo1_0.4.250717-ubu24_amd64.deb

mlf-utsusemi-with-ugao_4.0.250926-ubu24_amd64.deb

mlf-utsusemi-sas_4.0.250630-ubu24_amd64.deb

mlf-utsusemi-dna_4.0.250629-ubu24_amd64.deb

mlf-utsusemi-eng_4.0.250926-ubu24_amd64.deb

ファイル名に含まれる 0.4 (mlf-manyo1) および 4.0 (mlf-utsusemi-with-ugao)はリリース番号と呼ばれ、比較的大きなバージョンアップがあった場合に新たに付与される。 250926 はソースコードの最終変更日でリリース番号とは独立にコードのアップデートとともに増加する。 ubu24 はインストール先のUbuntuのバージョン、 amd64 はCPUのタイプ(アーキテクチャ)を示す。

特定のビームラインのみ#

できるだけ不要なパッケージをインストールしたくない場合、使用したいビームライン環境に必要なパッケージのみダウンロードして直接インストールすることも可能である。

インストールスクリプトの引数として、使用したビームラインの装置コードを与えるだけである。

以下はBL01四季(SIK)に最小限必要なパッケージをインストールする例である。

$ rm -f installUtsusemi_FromDebianPackages.sh
$ wget https://cdn.mlf.plus/ce/Utsusemi4/Downloads/installUtsusemi_FromDebianPackages.sh
$ sudo bash ./installUtsusemi_FromDebianPackages.sh SIK
[sudo] password for xxx:

なお、BL01四季を含めた他のコードは以下のようになる。

List of argument for installUtsusemi_FromDebianPackages.sh#

ビームライン

コード

BL01(四季)

SIK

BL02(DNA)

DNA

BL11(Planet)

HPN

BL14(アマテラス)

AMR

BL15(大観)

SAS

BL19(匠)

ENG

環境設定#

環境設定とは空蟬を動作させるのに必要な環境を構築・設定するものである。

  • アプリやデータ可視化に必要なPythonパッケージのインストール

  • アプリを実行するために必要な環境変数の設定

Pythonパッケージ#

空蝉に必要なPythonパッケージは以下の通りである。基本的に pip やUbuntuのパッケージ管理の apt コマンドでインストールする。

Python packages required for Utsusemi environment#

Packages

required version

pip install

Ubuntu Package name

Numpy

1.6.x or later

numpy

python3-numpy

Scipy

0.10.x or later

scipy

python3-scipy

matplotlib

1.2.x or later

matplotlib

python3-matplotlib

PySide2 or PySide6

5.x or later

PySide6

python3-pyside2.qtcore python3-pyside2.qtwidgets

ただしUbuntuで用意されているパッケージは基本的に古いので、 venv を利用して pip でインストールすることをお勧めする。

Ubuntuにおける venv による環境作成の詳細は述べないが、一例としては下記のようになる。

sudo apt install python3-venv
mkdir /path/to/work/folder
cd /path/to/work/folder
python3 -m venv venv
source venv/bin/activate
pytyhon3 -m pip install numpy scipy matplotlib PySide6

一度設定作成してしまえば、その後は環境を有効にするために以下だけ実行すればよい。

cd /path/to/work/folder
source venv/bin/activate

環境変数#

続けて、空蝉のアプリを実行するための環境変数( MLFSOFT_PATH 及び PATH )を設定する。 一例として、下記のコマンドを実行する。

# Utsusemi environment setting
export MLFSOFT_PATH=/opt/mlfsoft
export PATH=${MLFSOFT_PATH}/python-utsusemi/utsusemi/bin:${PATH}

これは空蝉のインストール先を示す環境変数( MLFSOFT_PATH )を設定し、Linuxの実行パス環境変数( PATH )に追記するものであるが、これにより、いくつかの空蝉アプリが直接実行できるようになる。

動作確認#

環境設定ができていれば、 EnvironSetting アプリをコマンドから起動できるはずである。

$ EnvironSetting
../../_images/UtusemiEnvironSettingsDlg01.png

エラーが出た場合は、インストール手順か、環境設定に問題がある可能性が高いので、もう一度やり直すこと。

アンインストール#

アンインストールを行う場合は下記のコマンドを実行すれば良い。順番はインストールの時の逆順で、 mlf-utsusemi-dna, mlf-utsusemi-sas, mlf-utsusemi-with-ugao、最後に mlf-manyo1 である。

$ sudo apt remove mlf-utsusemi-eng
$ sudo apt remove mlf-utsusemi-dna
$ sudo apt remove mlf-utsusemi-sas
$ sudo apt remove mlf-utsusemi-with-ugao
$ sudo apt remove mlf-manyo1

なお、まだいくつかの関連するフォルダがあるので、必要に応じて削除する。

インストール時に作成したデータフォルダの削除は下記のように行うことができる。

$ rm -rf /data

また、一時ファイル保存フォルダは下記のように削除可能である。

$ rm -rf ~/ana

問題が発生した場合#

インストール時にエラーや予期せぬ状態になった場合、使用したOSとインストール方法を確認して手順に問題がないようなら、担当者(著者)へ状況報告をお願いしたい。

インストール後の動作に問題が発生した場合は、前節に示した空蟬のバージョンを確認し、発生した事象を担当者(著者)まで報告していただきたい。

その他の情報#

万葉ライブラリパッケージ(mlf-manyo1)に必須のパッケージは以下の通りである。

Package names required for Manyo library installation#

パッケージ名(バージョンは省略)

libboost-system

libboost-filesystem

libboost-serialization

libboost-program-options

libgsl

libhdf5

libnexus

libssl

空蟬環境パッケージ(mlf-utsusemi-with-ugao)に必須のパッケージは以下の通りである。

Package names required for Utsusemi installation#
Ubuntu 20.04用パッケージ名

(バージョンは省略)

mlf-manyo1

python3-matplotlib

python3-scipy

python3-pyside2.qtcore

python3-pyside2.qtgui

python3-pyside2.qtwidgets