WiringInfoとそのフォーマットについて

概要

空蟬において、DAQミドルウェアが出力するイベントデータに含まれる情報(TOFや検出器内位置)を任意のヒストグラムに変換するために必要な情報をXML形式で記述しており、それを”Wiring Info”と定義している。本稿ではWiringInfoの役割とそのフォーマットについて記述する。

WiringInfoの情報

Wiring Infoは、XML形式によって記述されている。またその情報には大まかに3種類ある。WiringInfoが持つ情報は以下のようなものである。

Wiring Info内の情報

XMLのタグ

1

どのイベントが、どの検出部位なのか

PixelInfo, dqq, moduleNo, detIdなど

2

イベントのTOFからどのようなヒストグラムを作成するのか

tofBinPattern, tofBinInfo, frameInfoなど

3

特定の検出器固有の付加的な情報

psdParamなど

通常、検出器が捉えたシグナルはハードウェア的にイベント化され、何本かまとめられた単位(モジュール)ごとにDAQミドルウェアによってファイルに書き込まれる。 得られた中性子散乱のデータがどの検出位置を持つか区別するために、それぞれの検出部位(pixel)ごとに内部で固有のID ( Pixel ID )を与えている。

空蟬4以降のPixel IDの扱いとしては、検出部位が不変なシンチレーションカウンターや0次元カウンターなどではユニークに決められるので、全ての検出部位にIDを与えることが可能である。一方、位置敏感型検出器(PSD)のように比較的自由に検出部位の分割数を変更できるものに対してはIDを割り振ることはあまり意味がない(データ処理に応じて変わるため)。よって基本は内部で使用するIDという位置付けとなっている。

本稿では、Wiring Infoのフォーマットの詳細と、その中のパラメータを編集するためのツールについて述べる。

フォーマットの詳細

これらの情報を収めるXMLタグの詳細な情報を以下に記す。

Pixel情報

イベントデータファイル、およびイベント内の検出器内位置情報から、Pixel Idを割り振るための情報である。

wiringInfo

WiringInfo内のすべてのエレメントの親である。

名前

意味・説明

属性

inst

装置コード

version

バージョン

update

アープデート日時

親エレメント

なし

子エレメント

pixelInfo その他

pixelInfo

データ収集系機器とイベントデータファイル、PixelIdを結ぶ情報の最上位。

名前

意味・説明

親エレメント

wiringInfo

子エレメント

daq

DAQ情報

pixelInfo/daq

名前

意味・説明

属性

daqId

DAQ CPUに固有な番号

親エレメント

pixelInfo

子エレメント

module

DAQ内のモジュール番号

pixelInfo/daq/module

名前

意味・説明

属性

moduleNo

module番号(DAQ CPU内では固有)

detType

検出器の種類 “PSD”,”SCIN1D”,”SCIN2D, “N2MON”,”TRIGNET” 基本的にはこれらの文字列が含まれていれば良い (バリエーションの許可。例:”N2MON1”)

n

モジュール内の検出器の数

親エレメント

daq

子エレメント

detector

このモジュール内の検出器情報

moduleの記述の注意点

GateNETをモニターのデータ収集系機器としているときの注意

GateNETにて生成されるイベントデータには、”Digital”データと”Analog”データがあるが、これらは最新(2014.3.19)の空蟬では「異なる検出器」として取り扱われる。従って、GateNETのモジュール部分の書き方は、2つの検出器が含まれているように記述する。

detector No = 0が、Digitalデータで、No = 1がAnalogデータとなる。

例:

-- 前略 --
<module i="6" moduleNo="254" detType="N2MON" n="2">
    <detector i="0" detId="400" numAxis="1" headPixelId="48000" numPixel="1" />
    <detector i="1" detId="401" numAxis="1" headPixelId="48001" numPixel="1" />
</module>
-- 後略 --

この例では、detId=400がDigitalデータ、detId=401がAnalogデータで、それぞれ異なるElementContainerArray(ただし含有するElementContainerは一つずつ)に入っている。

pixelInfo/daq/module/detector

名前

意味・説明

属性

i

インデックス(位置敏感型1次元検出機の場合

Pixel Number となる)

detId

検出器に固有な番号

numAxis

検出器の軸の数固

headPixelid (通常省略)

検出器の先頭のPixelIdを指定できる

numOfPixelId

この検出器が含むPixelIdの数

n

子エレメント<axis>の数, <axis>がなければ省略可

親エレメント

module

子エレメント

なし or axis

numAxisが1:なし, 2以上:axis

コンテンツ

なし

pixelInfo/daq/module/detector/axis

名前

意味・説明

属性

i

インデックス

label

この軸のラベル

size

この軸のPixelサイズ

start

実際に使用し始めるPixel値

親エレメント

detector

子エレメント

なし

コンテンツ

なし

TOF変換情報

イベントに含まれるTOF情報に対して行うヒストグラム化に関する情報を記述する。 主に以下の情報を含む。

  1. ヒストグラムの横軸

  2. マスク処理

  3. フレーム処理

tofBinPatternList

TOFのbinのパターン(複数可)を登録する。

名前

意味・説明

属性

なし

親エレメント

wiringInfo

子エレメント

tofBinPattern

tofBinPatternList/tofBinPattern

TOFのbinのパターンをIDを付けて指定する。

名前

意味・説明

属性

patternId

そのbinに与えたID

type

そのbinの記述形式(後述)

n

type=”0”のときの子エレメント

<tofBinSection>の数

親エレメント

tofBinPatternList

子エレメント

コンテンツ

type指定によるため後述.単位micro-second

type一覧

type

形式

パラメータ数

XMLコンテンツ

実装状況

0

複合型.子エレメント<tofBinSection>の組合わせ

1

羅列型.Bin全てのリスト

必要数

カンマ区切り

済み

2

定幅型.開始値, 終了値, Δt

3

start_tof,end_tof,Δtof

済み

3

定率型.開始値, 終了値, Δt/t

3

start_tof,end_tof,racio_Δtof/tof

済み

12

Time Focusing(定幅型)開始値, 終了値, Δt

3

start_tof,end_tof,Δtof

済み

13

Time Focusing(定率型)開始値, 終了値, Δt/t

3

start_tof,end_tof,racio_Δtof/tof

済み

20

Energy Transferへのダイレクト変換

5 or 6

Ei,hw_min,hw_max,Δhw,[L1,]t0_shift

済み

21

Energyへのダイレクト変換

3

E_min,E_max,ΔE

済み

22

Q(一次元)へのダイレクト変換

6

Q_min,Q_max,ΔQ,ki_x,ki_y,ki_z

済み

23

Δλ一定へのダイレクト変換

3

λ_min, λ_max, Δλ

済み

24

Δλ/λ一定へのダイレクト変換

3

λ_min, λ_max, racio_Δλ/λ

済み

25

d値へのダイレクト変換

3

d_min, d_max, Δd

済み

27

Energy Transferへのダイレクト変換 for Ei fix

DNA専用

28

Energy Transferへのダイレクト変換 for Ei fix

DNA専用

tofBinSection

tofBinPatternをtype=”0”としたときに組み合わせられるパターンを指定する。

名前

意味・説明

属性

i

インデックス

type

そのbinの記述形式。tofBinPatternのそれと同じ

親エレメント

wiringInfo

コンテンツ

tofBinPatternと同じ

tofBinInfo

tofBinの情報を複数収めておく。

名前

意味・説明

属性

なし

親エレメント

wiringInfo

子エレメント

tofBin

tofBin

各PixelIDのTOF binをtofBinPatternで定義したpatternIDで指定する。

名前

意味・説明

属性

patternId

与えるbinパターン

offsetBin

binパターンの原点をシフトするため、TOF値をずらす。 正確にはイベントのTOF情報にこの値を加える。 単位はマイクロ秒。

maskPtnId

TOF(観測値)の領域にマスク(エラー値が負)を 与えるためのTofMaskPatternIdを記述。

親エレメント

tofBinInfo

子エレメント

コンテンツ

All

すべてのPixelIDに適応

<n1>-<n2>

ハイフンは範囲(10-39:10から39まで)

<n1>,<n2>

カンマは個別の指定

<n1>,<n3>-<n4>

両方の共存も可能

tofMaskPatternList

TOF(観測値)へのMASKのパターン(複数可)を登録する。

名前

意味・説明

属性

なし

親エレメント

wiringInfo

子エレメント

tofMaskPattern

tofMaskPatternList/tofMaskPattern

TOF(観測値)へのbinのパターンをIDを付けて指定する。

名前

意味・説明

属性

maskPtnId

MASKのパターンに与えたID

親エレメント

tofMaskPatternList

子エレメント

コンテンツ

<tof min>-<tof max>[, <tof_min>-<tof max>.] ハイフンで範囲指定、カンマ区切りで複数指定

frameInfo

  • 0.3.6以降

40msフレームの境界(キッカー)を跨いだデータを解析する場合(注:いわゆるダブルフレームではない)に、その境界とする場所を指定する。指定は、TOF, Lambda, Energy, Ei(非弾性散乱)の単位で与えることができる。また、以前のフォーマット( frameNo, boundary )でも指定可能である。

名前

意味・説明

属性

type

使用する値の単位を示す。使用できる単位は “tof”, “lambda”, “energy”, “ei” 。 省略されるとTOFと認識される。

boundary

境界となる値

親エレメント

wiringInfo

コンテンツ

使用するフレームと境界TOFを指定する。(0.3.5.x以前)

名前

意味・説明

属性

frameNo

使用する最大フレーム番号。 1stフレームだけなら1(0も可)、 1st〜2ndフレームを使用するなら2

boundary

境界となるTOF

親エレメント

wiringInfo

コンテンツ

PSD専用エレメント

psdParam

PSDの両端の波高値から位置を計算するパラメータA,B,Cを設定する。

名前

意味・説明

属性

なし

親エレメント

wiringInfo

子エレメント

parameter

psdParam/parameter

各PSDのパラメータA,B,Cおよび中性子のシグナルとして判断する波高値の最小値(LD,Lower Discrimination?)と最大値(UD)を指定する。

名前

意味・説明

属性

detId

対象となるdetId

親エレメント

psdParam

コンテンツ

<A>,<B>,<C>,<LLD>,<UD> パラメータA,B,Cと箱内の範囲LLD,UDを カンマ区切りで指定する。

psdBinInfo

Pixel No(検出器内部の検出位置に対する順番)を計算する情報を収める。

名前

意味・説明

属性

なし

親エレメント

wiringInfo

子エレメント

positionBin

psdBinInfo/positionBin

波高値とABCパラメータで計算されたPSDの検出位置XからPixel Noを算出するパラメータの適応範囲を規定する

0 <= X < <deltaX>*<numPixel>

PixelNo = int ( (X-<offsetX>)/<deltaX> )

名前

意味・説明

属性

i

ナンバリング(ユニークである必要あり)

numPixel

the number of pixels / detector

deltaX

分割幅

offsetX

Xのシフト(通常は0)

親エレメント

psdBinInfo

子エレメント

なし

コンテンツ

Allもしくは <min1>-<max1>[,<min2>-<max2>,..]

匠(BL19)専用エレメント

tofTriggerDelay

TOF Triggerから、DAQへ入力するトリガーまでの遅延時間。単位はマイクロ秒。 Decode_EventDataが行われるときに、この値がTOFに足される。

名前

意味・説明

属性

親エレメント

wiringInfo

コンテンツ

遅延時間。単位はマイクロ秒