Windows用バイナリ版インストール手引書

著者

稲村 泰弘

最終更新日

Jul. 13th, 2021

対応空蟬リリース

4.0 or later

インストールが可能なWindowsとユーザー名

以下の条件を満たす必要がある。

Windowsの種類

Windows 10の 64bit版 でのみ動作する。

それ以外の環境(32bit版も含め)は今後もサポートする予定はない。

アカウント名

インストールするWindowsの管理者ユーザーのアカウント名が 英数字 でなければならない。 もし日本語を利用していた場合、新たに英数字のアカウント名でユーザーを作成し、そちらでログインしてからインストールする必要がある。新たにアカウントを作成する方法などは省略する。

アカウント名の条件

良い例

悪い例

英数字であること

Inamura

稲村

インストール

インストール前の確認事項

インストールを行う前に、Windowsの Python をインストールする必要がある。これは、 https://www.python.org/ などから行えるが、インストールするPythonのバージョンに注意すること。また64bit版しか動作しないことに注意。なお、Python 2.x や32bit版の対応はしない。

WindowsにインストールできるPython環境は様々に存在するが、現状、空蟬が動作することを確認できたものは以下の2種類であるので注意すること。

Python環境

URL

対応バージョン

Anaconda

https://www.anaconda.com/products/individual

2021.05, 2020.11

2019.03

python.org(本家)

https://www.python.org/downloads/windows/

3.7のみ対応

インストールされるアプリケーション

空蟬ソフトウェア群は、インストール時に指定した場所(C:¥¥Program Files¥Utsusemi¥)にある。 また、アプリケーションへのショートカットが、以下の場所に作成される。

「スタート」メニュー >> Utsusemi

image08

ここには以下のプログラムが準備されている。詳細は後で述べる。

Utsusemiアプリケーション

説明

D4MatSlicer

D4MatSlicerを起動する

D4Mat2Slicer

D4Mat2Slicerを起動する

M2PlotPlus

M2Plotを起動する

MPlot

MPlotを起動する

SequenceEditorQ

SequenceEditorを起動する

Utsusemi Environment Settings

【環境設定】空蟬のフォルダ環境変数を設定する

Utsusemi Shell

Utsusemi環境が設定されたターミナルを起動する

初期設定

前準備(必要なフォルダの作成)

空蟬Win版では、まず解析用データの置き場所と一時ファイル保存場所をフォルダとして準備する必要がある。

データ保存場所

設定(環境変数名)

役割

データフォルダ (DATA_DIR)

イベントデータなどRAWデータを格納するフォルダ。(Linux版では”/data”)

解析用フォルダ (USR_DIR)

空蟬が作成する一時ファイルを保存先するana/tmpなどのフォルダを置く場所である。(Linux版では”$HOME”)

この二つのフォルダは、どこにあっても良いが、例えば下記のような感じで作成する。

設定

デフォルトフォルダ

データフォルダ

C:¥ユーザー¥ユーザー名¥ドキュメント¥Utsusemi¥DATA

解析用フォルダ

C:¥ユーザー¥ユーザー名¥ドキュメント¥Utsusemi¥HOME

image09

環境設定

次に空蟬の環境の設定を Utsusemi Environment Settings で行う。

Warning

この作業は、インストール後に1回は必ず行う必要がある。

このアプリケーションで設定できる内容は以下の通りである。

  • 使用する装置環境(BL01, BL11, BL14, BL15)

  • データフォルダと解析フォルダの設定

  • ログを残すかどうか

  • 高速化のための並列計算の数

  • デバッグモードのオン・オフ

よって、違う装置(BeamLine)のデータを解析する場合は、この環境設定で装置環境を切り替える必要がある。

環境設定の起動

「スタート」メニュー >> Utsusemi

image08

から、Utsusemi Environment Settings を起動する。

image10

設置項目

  1. Instrument

    解析に使用するデータの装置の選択を行う。これにより、使用するRAWデータフォルダ、使用できるコマンドなどが変化する。

  2. Log quiet

    解析コマンドのログを減らす場合に使用する。普段はYESで良い。

  3. Utsusemi_debugmode

    空蟬のデバッグモード。普段はNO(チェックボックスオフ)で良い。

  1. Number of thread

    一部の解析コマンドが使用するマルチスレッドの最大値を設定する(通常は実行するPCのコアの数程度を設定すると良い)

  2. DATA_DIR 及び USR_DIR

    ここで必要な設定は、前節で作成した二つのフォルダを指定することである。

環境変数

設定(環境変数)

役割

DATA_DIR

イベントデータなどRAWデータを格納するフォルダ。(Linux版では”/data”)

USR_DIR

空蟬が作成する一時ファイルを保存先するana/tmpなどのフォルダを置く場所である。(Linux版では”$HOME”)

設定後

設定項目を反映するために OK ボタンを押す。正しく設定されれば、確認のダイアログが表示される。

image11

このダイアログが出ずにエラーのダイアログが出た場合は、特に指定した DATA_DIRUSR_DIR のフォルダがあるかどうかを確認すること。この設定により、 USER_DIR の下に

  • ana フォルダ

  • この下に tmp フォルダ、および xml フォルダ

がなければ自動的に作成される。

image12

Warning

もし、ana フォルダや、tmp xml フォルダが見つからないようなら設定を見直すか、自分で作成しておくこと。 そうでないと空蟬は落ちます

一方、DATA_DIR で設定した場所には、次節にて述べるルールで、データ(イベントデータなど)を配置する。

データの配置ルール

環境変数 DATA_DIR で指定したフォルダに、以下のようなルールで配置する。

  1. 装置コードと同じ名前のフォルダを作成する

    四季(BL01)なら “SIK”、アマテラス(BL14)なら “AMR”

  2. 装置コードのフォルダに、その装置でのRun Noのついたデータのフォルダを置く

    四季(BL01)なら、例えば “SIK012345_20150301” など

    BL

    装置コード

    配置例

    BL01 四季

    SIK

    DATA/SIK/SIK012345_20160401

    BL11 PLANET

    HPN

    DATA/HPN/HPN012345_20160401

    BL14 アマテラス

    AMR

    DATA/AMR/AMR012345_20160401

    BL15 大観

    SAS

    DATA/SAS/SAS012345_20160401

    BL19 匠

    ENG

    DATA/ENG/ENG012345_20160401

解析の開始

環境設定が終了し、解析するデータの配置も終わったなら、アプリケーションから解析が行えるようになる。

空蟬のインストールにより、以下のアプリケーションが「スタート」メニューから使用できる。簡単な説明を行う。

Utsusemi Environment Settings

【環境設定】空蟬の環境変数を設定する。詳細は上記の「環境設定と初回起動時の注意点」以下を参照のこと。

MPlot, M2PlotPlus

空蟬で使用されるデータ可視化ソフトウェアである。それぞれ、1次元プロッタ、2次元プロッタである。詳細は空蟬ユーザーマニュアルを参照のこと。Linux版と同じ。

D4MatSlicer, D4Mat2Slicer

D4MatSlicer、およびD4Mat2Slicerを起動する。あとはLinux版と同じ。

SequenceEditorQ

SequenceEditorを起動する。

Utsusemi Shell

空蟬環境で、Shell(コマンドライン)を起動する。この上で環境設定で指定したビームラインに応じたコマンドを呼び出すことができる。よって、自作のスクリプトを走らせることもできる。

解析に使用するアプリケーションの詳細な説明は、空蟬ユーザーズマニュアルを参照のこと。

コマンドプロンプトからの使用

アプリケーションを利用せずに、例えば自分で作成したPythonスクリプトを実行することも可能である。特に現場で作成したスクリプト、新しい解析のアイデアを形にしたものなどを自由に実行するためには、コマンドプロンプト上で空蟬環境を利用する必要がある。その方法を以下に示す。

  1. Utsusemi Shell を起動する

  2. 空蟬の設定が有効な状態でコマンドプロンプトが立ち上がる。

  3. そのままPythonを起動するなり、他のインタプリタ(例えば iPython など)を利用する。また実行フォルダを変更しフォルダの移動、インタプリタの起動、スクリプトの実行を行うことができる。

バージョンの確認

インストールされた空蟬のバージョンを確認するには、以下の方法がある。バグなどの報告や、アップデートする際の目安となる。

  1. インストーラーのファイル名

    インストーラーファイル名には、数字が2種類ある。リリース番号は比較的大きなバージョンアップ(機能追加)の時に付与される。同じリリース番号でもマイナーなアップデート(バグフィックス)の場合は最終アップデート日付のみ変更される。

    Utsusemi.X.Y.Z.yymmdd

    X.Y.Z

    リリース番号

    yymmdd

    最終アップデート日付

  2. Utsusemi Shell からコマンド十国

    Utsusemi Shell を起動し以下のコマンドを打つ。

    >>> import utsusemi
    >>> utsusemi.__version__
    '4.0.0'
    

    もしくは

    >>> import UtsusemiInfo
    

    すると、以下のような情報が表示される。

    ---------------------------------------------
                   Utsusemi Info
    ---------------------------------------------
             version :  X.Y.Z
      Contact person : Yasuhiro Inamura
              e-mail : xxxxx.yyyyy@j-parc.jp
    ---------------------------------------------
    

    ファイル名と同様、X.Y.Zがリリース番号である。

    image13

アンインストール

Windowsデフォルトのアンインストール(スタートメニュー >> コントロールパネル >> プログラム >> プログラムのアンインストール)や、空蟬パッケージインストーラーを起動しアンインストールを選択する。

ただし、完全には消去されず、幾つかフォルダやファイルが残される。それらは手動で消去して良い。

C:¥¥Program Files¥Utsusemi(フォルダ)

また、幾つかの設定ファイルがフォルダに入って残されている。次回インストールした時に初期設定として呼び出されるが、消去しても良い。

C:¥¥Users¥”ユーザーネーム”¥AppData¥Roaming¥Utsusemi(フォルダ)

問題が発生した場合

問題が発生する場合、以下の二つの場面が考えられる。

インストール直後の問題

インストールしたのにアプリが起動しない、といったインストール直後に発生している問題の大部分は、インストールに失敗しているか、環境設定が適切になされていないか、のどちらかの原因が濃厚である。 一度アンインストールし、再度インストール、環境設定を行うこと。 それでもエラーなどが出る場合、その状況を担当者に伝えること。

過去によくあったのが、

  • 空蟬の条件(Python 3.7.x, 64bit)に合致していないPythonがインストールされている

  • Pythonが2種類以上インストールされている

などである。なお、2種類インストールされていた場合、大抵どちらかが壊れている可能性が高く、正しくアンインストールできないことがある。その場合は、

  1. アンインストールできるPythonは、アンインストールする。

  2. 壊れてアンインストールできない方は、そのバージョンをインストールしたPythonインストーラを起動し、インストールではなく「修復」を選択し、正しくインストールされた状態にする。

  3. 改めて修復したPythonをアンインストールする。

  4. 最後に正しいPythonをインストールする。

コマンド実行中の問題もしくは可視化ソフトウェア実行中の問題

想定とは異なる事象、例えばデータ処理が進まない、GUIのソフトウェアが想定される動作をしない(ボタンが効かない)などあった場合、症状とターミナルに表示されたログを担当者に送付すること。

症状に関しては、

  • 何をしようとして

  • どのコマンド(ソフトウェア)を使用して

  • 何をしたら

  • どうなった

の情報を担当者に報告・送付すること。