macOS ( Big Sur, Monterey )用バイナリ版インストール手引書¶
- 著者
稲村 泰弘
- 最終更新日
May. 27th, 2022
- 対応空蟬リリース
4.0 or later
目次
本稿では、2020年から発売が開始された macOS である Big Sur (11.x) 及び Monterey (12.x) 上で動作する空蟬4のバイナリ版のインストールについて述べる。
なお、インストール用のバイナリファイルは、従来のIntel版と、新しいApple Siliconチップ (M1 chip)版のそれぞれで異なることに注意すること。
インストールが可能なMacOS¶
以下のmacOSでのみ動作検証している。
Intel用 macOS 11.3 (Big Sur) 及び 12.4 (Monterey)
Apple silicon(M1)用 macOS 12.3 (Monterey)
macOS |
11.x(Big Sur) |
12.x(Monterey) |
---|---|---|
Intel |
Enable |
Enable |
AppleSilicon(M1) |
Enable |
Not verified |
インストール手順¶
空蟬4のインストーラは、macOS でよく使用されるパッケージファイル(ファイル名の拡張子が .pkg )として配布される。このファイルをダブルクリックすることで「アプリケーション」フォルダに Utsusemi フォルダがインストールされる。
準備 : macOSセキュリティの設定¶
残念ながら空蟬はmacOSから見て安全が保障されたソフトウェア(AppStoreなどで配布されるような公式のアプリケーション)ではないため、実行するためには予めMacOSのセキュリティの設定を行う必要がある。
Warning
もしセキュリティ設定前に、すでに空蟬をインストールしていた(アプリケーションフォルダにUtsusemiフォルダがある)場合、予めUtsusemiフォルダを削除しておくこと
Finderの「アプリケーション」 -> 「ユーティリティ」 の中の「ターミナル」を起動する
ターミナルの中で以下のコマンドを打つ。パスワードを聞かれるので、ログインする時のパスワードを打ち込む。
$ sudo spctl --master-disable
macOSのシステム環境設定を開き、「セキュリティとプライバシー」設定の「一般」タブを開く
先のコマンドにより、これまで隠されていた「ダウンロードしたアプリケーションの実行許可」に「すべてのアプリケーションを許可」項目が表示されるので、それを選択する
もし上図の「全てのアプリケーションを許可」項目が見えない場合は、Mac本体を再起動すると「すべてのアプリケーションを許可」が選択できるようになるので、設定する。
このセキュリティ設定がなされていないと、空蟬アプリの起動時に 全く何も反応がない ので注意すること。
空蟬4のインストール¶
インストーラをダブルクリックする
後は通常のインストールダイアログが現れるので「続ける」を押す。
インストール先を変更せずに「インストール」を押す(インストール先は「アプリケーション」フォルダ)
パスワードを入力する
インストールが開始される
インストールが完了するので、「閉じる」を押す
インストールされるアプリケーション¶
空蟬ソフトウェア群は、「アプリケーションフォルダ」の「Utsusemi」フォルダ内にある。もしくはLaunchPadからもアクセスできる。 インストールにより、以下のプログラムが準備される。
ここには以下のプログラムが準備されている。詳細は後で述べる。
Utsusemiアプリケーション
説明
D4MatSlicer
D4MatSlicerを起動する
D4Mat2Slicer
D4Mat2Slicerを起動する
M2PlotPlus
M2Plotを起動する
MPlot
MPlotを起動する
SequenceEditor
SequenceEditorを起動する
UtsusemiEnvironmentSettings
【環境設定】空蟬のフォルダ環境変数を設定する
UtsusemiShell
Utsusemi環境が設定されたターミナルを起動する
初期設定¶
必要なフォルダの作成¶
空蟬Mac版では、まず解析用データの置き場所と一時ファイル保存場所をフォルダとして準備する必要がある。
設定(環境変数名)
役割
データフォルダ (DATA_DIR)
イベントデータなどRAWデータを格納するフォルダ。(Linux版では”/data”)
解析用フォルダ (USR_DIR)
空蟬が作成する一時ファイルを保存先するana/tmpなどのフォルダを置く場所である。(Linux版では”$HOME”)
この二つのフォルダは本来どこにあっても良いが、macOS Catalina (10.15)以降のセキュリティ強化の結果、特にデータフォルダをデスクトップや書類フォルダ、共有フォルダに置くとアクセスできないことがある。したがって空蟬のmacOS版ではデフォルトの場所はホームフォルダ直下(/Users/<user name>/)としている。環境設定 Utsusemi Environment Setting (詳細は次項)の初回起動時にこの場所に自動的に作成される。この場所で不都合がある場合は、別途用意すること。
もし、ホームフォルダの場所がよくわからない場合は、下記のようにデスクトップのメニュー 移動 から ホーム を選択すれば良い。
環境設定と初回起動時の注意点¶
次に空蟬の環境の設定を Utsusemi Environment Settings で行う。
Warning
この作業は、インストール後に1回は必ず行う必要がある。
このアプリケーションで設定できる内容は以下の通りである。
使用する装置環境(BL01, BL11, BL14, BL15)
データフォルダと解析フォルダの設定
ログを残すかどうか
GUIアプリのデフォルトフォントサイズ
高速化のための並列計算の数
デバッグモードのオン・オフ
よって、違う装置(BeamLine)のデータを解析する場合は、この環境設定で装置環境を切り替える必要がある。
設置項目¶
- Instrument
解析に使用するデータの装置の選択を行う。これにより、使用するRAWデータフォルダ、使用できるコマンドなどが変化する。
- Log quiet
解析コマンドのログを減らす場合に使用する。普段はYESで良い。
Note
macOSでの空蟬の実行ログは通常あらわには表示されない。すべてのログは /tmp/mlfsoft.log に書き込まれる。
- Font Size
GUIアプリのフォントサイズを定義する。通常は12で良いだろう。大きくしたり小さくしたりはできるが、GUIパーツ(ボタンなど)やレイアウトが崩れる可能性があるので注意。
- Debug mode
空蟬のデバッグモード。普段はNO(チェックボックスオフ)で良い。
- Number of thread
一部の解析コマンドが使用するマルチスレッドの最大値を設定する(通常は実行するPCのコアの数程度を設定すると良い)
- DATA_DIR 及び USR_DIR
ここで必要な設定は、前節で作成した二つのフォルダを指定することである。
設定(環境変数)
役割
DATA_DIR
イベントデータなどRAWデータを格納するフォルダ。(Linux版では”/data”)
USR_DIR
空蟬が作成する一時ファイルを保存先するana/tmpなどのフォルダを置く場所である。(Linux版では”$HOME”)
設定後¶
設定項目を反映するために OK ボタンを押す。正しく設定されれば、確認のダイアログが表示される。
このダイアログが出ずにエラーのダイアログが出た場合は、特に指定した DATA_DIR と USR_DIR のフォルダがあるかどうかを確認すること。この設定により、 USER_DIR の下に
ana フォルダ
この下に tmp フォルダ、および xml フォルダ
がなければ自動的に作成される。
Warning
もし、ana フォルダや tmp フォルダが見つからないようなら設定を見直すか、自分で作成しておくこと。 そうでないと空蟬は落ちます 。
一方、DATA_DIR で設定した場所には、次節にて述べるルールで、データ(イベントデータなど)を配置する。
データの配置ルール¶
環境変数 DATA_DIR で指定したフォルダに、以下のようなルールで配置する。
装置コードと同じ名前のフォルダを作成する
四季(BL01)なら “SIK”、アマテラス(BL14)なら “AMR”
装置コードのフォルダに、その装置でのRun Noのついたデータのフォルダを置く
四季(BL01)なら、例えば “SIK012345_20150301” など
BL
装置コード
配置例
BL01 四季
SIK
DATA/SIK/SIK012345_20160401
BL11 PLANET
HPN
DATA/HPN/HPN012345_20160401
BL14 アマテラス
AMR
DATA/AMR/AMR012345_20160401
BL15 大観
SAS
DATA/SAS/SAS012345_20160401
BL19 匠
ENG
DATA/ENG/ENG012345_20160401
解析の開始¶
環境設定が終了し、解析するデータの配置も終わったなら、アプリケーションから解析が行えるようになる。
アプリから起動¶
空蟬のインストールにより、以下のアプリケーションも「アプリケーションフォルダ / Utsusemiフォルダ」もしくはLaunchpadから起動できるようになる。
- SequenceEditor
空蟬でデータ処理作業のメインとなるアプリである SequenceEditor を起動する。
- UtsusemiEnvironmentSettings
【環境設定】空蟬の環境変数を設定する。詳細は上記の「環境設定と初回起動時の注意点」以下を参照のこと。
- MPlot, M2PlotPlus
空蟬で使用されるデータ可視化ソフトウェアである。それぞれ、1次元プロッタ、2次元プロッタである。詳細は空蟬ユーザーマニュアルを参照のこと。Linux版と同じ。
- D4MatSlicer, D4Mat2Slicer
D4MatSlicer、およびD4Mat2Slicerを起動する。あとはLinux版と同じ。
- UtsusemiShell
空蟬環境で、Shell(コマンドライン)を起動する。この上で環境設定で指定したビームラインに応じたコマンドを呼び出すことができる。よって、自作のスクリプトを走らせることもできる。
解析に使用するアプリケーションの詳細な説明は、空蟬ユーザーズマニュアルを参照のこと。
Note
現時点(2022.4.19)でいくつかのアプリを単独起動させるとファイル読み込み(ヒストグラム化処理やD4Matデータ)でエラーが発生することが判明している。よって SequenceEditor, D4mat, D4mat2 に関してはアプリ起動時にターミナルが必ず開く仕様となっている。この連動したターミナルを閉じるとGUIアプリも落ちるので注意すること。
UtsusemiShellから起動¶
Linuxでの処理に慣れている場合、空蟬の全機能を使うために UtsusemiShell から各種ソフトウェアを起動することもできる。 空蝉環境でターミナルが立ち上がるので、ここで各種空蟬のコマンドや機能を利用することが可能となる。スクリプトを走らせたり、GUIを起動したりできる。
===========================================
Welcome to Utsusemi Environment for SIK
===========================================
Ana : Sequencer
M2Plot: M2PlotPlus
D4mat : D4MatSlicer
D4mat2: D4Mat2Slicer
===========================================
hoge@localhost %
ここで、 Ana と打てば SequenceEdirot が起動する。他にも M2Plot や非弾性散乱装置であれば D4mat , D4mat2 なども使用可能である。
ターミナルからの使用¶
アプリケーションを利用せずに、例えば自分で作成したPythonスクリプトを実行することも可能である。特に現場で作成したスクリプト、新しい解析のアイデアを形にしたものなどを自由に実行するためには、
UtsusemiShell を起動して利用する
ターミナルアプリ上で、空蟬環境を利用する
のやり方がある。A. UtsusemiShell に関しては前項で少し触れたが、これを用いるとシンプルな設定でターミナルが起動する。先に示した SequenceEditor の起動だけではなく、いくつかのアプリもここから起動することも可能である。
すでに自分でターミナルの設定を変更していてその環境で空蟬環境も利用する場合は、BのMacOSのターミナル上で空蟬環境を利用する必要がある。その方法を以下に示す。
ターミナルを起動する。
以下のコマンドを実行する。
$ source /Applications/Utsusemi/.opt/bin/_loadenv
これで直接万葉ライブラリや空蟬の関数を呼び出すことができる。
$ python3 Python 3.9.12 (main, Apr 18 2022, 11:57:03) [Clang 13.1.6 (clang-1316.0.21.2.3)] on darwin Type "help", "copyright", "credits" or "license" for more information. >>> import Manyo Manyo>>>
バージョンの確認¶
インストールされた空蟬のバージョンを確認するには、以下の方法がある。バグなどの報告や、アップデートする際の目安となる。
インストーラーのファイル名
インストーラーファイル名には、数字が2種類ある。
例
Utsusemi_X.Y.Z_nnnn
X.Y.Z
リリース番号
nnnn
最終アップデート日付
Utsusemi Shell でのコマンド
Utsusemi Shell を起動し以下のコマンドを打つ。
>>> import utsusemi >>> utsusemi.__version__ '4.0.0'
もしくは
>>> import UtsusemiInfo
すると、以下のような情報が表示される。
--------------------------------------------- Utsusemi Info --------------------------------------------- version : X.Y.Z (rev nnnnnn) Contact person : Yasuhiro Inamura e-mail : xxxxx.yyyyy@j-parc.jp ---------------------------------------------
ファイル名と同様、X.Y.Zがリリース番号、nnnnが最終アップデート日付である。
アンインストール¶
アプリケーションフォルダ内の、Utsusemiフォルダをゴミ箱へ捨てるだけである。
ただし、完全には消去されず、幾つかフォルダやファイルが残される。これらも消去したい場合は手動で行うこと。
DATA_DIR フォルダ
USR_DIR フォルダ
また、幾つかの設定ファイルが残されている。次回インストールした時に初期設定として呼び出されるが、消去しても良い。
ホームフォルダ/Library/Utsusemi フォルダ
$ rm -rf $HOME/Library/Utsusemi
ただし、これは不可視フォルダなので、通常目にすることはない。
問題が発生した場合¶
想定とは異なる事象、例えばデータ処理が進まない、GUIのソフトウェアが想定される動作をしない(ボタンが効かない)などあった場合、症状とログファイルを担当者に送付すること。また既知の問題(未解決)もあるので、注意すること。
ログファイルについて¶
macOS版では、データ処理中のログは、ターミナル経由で起動するアプリ ( SequenceEditor, D4mat, D4mat2 ) ではターミナル上に表示されるので、それをコピーする。
一方それ以外のアプリでは /tmp/mlfsoft.log に書き込まれるので、このログファイルを取り出すこと。 ただし、通常のファインダからはアクセスできないので、ターミナルから
$ cp /tmp/mlfsoft.log ~/Desktop
として、デスクトップにコピーするか、ファインダのメニュー「移動」から「フォルダの移動…」を選んででてきたダイアログに、 /tmp/ と打ち込めばこのフォルダにアクセスできるようになる。