IROHA2について

概要

実験装置制御ソフトウェアフレームワークIROHA2は、大強度陽子加速器施設(J-PARC) 物質・生命科学実験施設(MLF)に設置した中性子実験装置等の実験制御を行うためのソフトウェアである。 本ソフトウェアを用いることにより、利用者はWebブラウザから実験装置内にネットワーク分散配置された機器を用いた測定が可能になり、 測定情報をデータベース管理可能な形で取得することができる。 本ソフトウェアは機器制御を実施するデバイス制御サーバー群と実験装置の測定を管理する装置管理サーバー、 自動測定を可能にするシーケンス管理サーバー、実験装置の測定状態、デバイスステータスを統合的に管理する統合制御サーバーにより構成される。

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Fig. 1 IROHA2の概略図

機能・特徴

デバイス制御サーバー

デバイス制御サーバーは実験に用いる機器の監視および操作を行う。 機器に応じた制御プログラム(デバイスモジュール)を作成し、サーバーに登録することで、 Webユーザーインターフェース(Web UI)を通して機器への接続・操作を行うことができる。

また、サーバーの操作に関するログ(操作ログ)、機器のステータスのログ(監視ログ)、 測定中の機器のステータスのログ(測定ログ)を保存する。 これらのログはWeb UI上で確認することが可能で、 測定ログについてはグラフとして可視化することが可能である。

装置管理サーバー

装置管理サーバーはデバイス制御サーバーで制御する機器の管理およびDAQシステムによる測定の制御を行う。 複数のデバイス制御サーバーと接続し、デバイス制御サーバーの状態の監視や 測定に用いる機器の構成(デバイス構成)の作成を行う。 装置管理サーバーから測定を行うことで、測定データに加えて機器の構成情報、設定値および 測定ログを保存することができる。

また、IROHA2のユーザーアカウントの管理や認証なども行う。 後述するシーケンス管理サーバーや統合制御サーバーからのリクエストを処理し、 デバイス制御サーバーへの指令を送る、ハブ的な役割を担っているサーバーである。

シーケンス管理サーバー

シーケンス管理サーバーは実験の自動化を実現するサーバーである。 機器の制御およびDAQシステムによる測定を実行するコマンド(ファサード)を組み合わせてスクリプトとし、 そのスクリプトを実行することで自動的に実験を実施することができる(測定シーケンス)。

Web UIを利用してスクリプトの作成や編集、測定シーケンスの実行が可能である。 また、測定シーケンスは動的に変更が可能であり、未実行のコマンドの順番を変更したり、 未実行のコマンドの途中に追加のコマンドを差し込むことも可能である。

統合制御サーバー

統合制御サーバーは装置管理サーバーおよびシーケンス管理サーバーから情報を収集し、 装置全体の情報を統合的に監視、制御するためのサーバーである。 Web UIのカスタマイズにより必要な情報を選択して表示することが可能である。

遠隔操作・監視

IROHA2の4種のサーバーはすべてWeb UIを持ち、ネットワーク内の任意のマシンからアクセスして操作を行うことができる。 IROHA2を実行しているマシンでの操作はもちろんのこと、そのマシンと同一のネットワーク内のマシンであれば操作が可能である。 これにより、例えば、自身の居室からIROHA2を操作し、実験をリモートで進めることも可能である。

また、統合制御サーバーおよびシーケンス管理サーバーは静的HTMLを出力する機能を持ち、 これを外部公開用サーバーに登録することでJLAN外から実験ステータスを監視することができる。

動作環境

IROHA2はLinux上のPython環境で動作する。

ハードウェア

Table 1 ハードウェア要件

項目

要件

CPU

インテル Xeon 1.86 GHz以上推奨

メモリー

8 GB以上推奨

HDD

2 TB以上推奨

ディスプレイ

XGA以上推奨

ソフトウェア

Table 2 ソフトウェア要件(IROHA2.8以前)

項目

要件

OS

CentOS 7 を推奨

Python

2.7 もしくは 3.6

Webブラウザ

Firefox を推奨

Table 3 ソフトウェア要件(IROHA2.8以降)

項目

要件

OS

AlmaLinux 8、9 を推奨

Python

3.9(デバイス制御サーバーのみPython2.7も対応)

Webブラウザ

Firefox を推奨

参考文献

引用すべき参考文献

  1. IROHA2: Standard instrument control software framework in MLF, J-PARC, Proceedings of NOBUGS2016, 76ページ

代表参考文献

  1. The control software framework of the web base, Proceedings of the J-PARC Symposium 2014 (JPS Conf. Proc. , 036013 (2015))

  2. Data acquisition and device control software framework in MLF, J-PARC, Proceedings of ICANSXXI (JAEA-Conf 2015-002)493~496ページ

  3. IROHA2: Standard instrument control software framework in MLF, J-PARC, Proceedings of NOBUGS2016, 76ページ

参考にした文献

  1. J-PARCと計算科学の連携、RISTニュースNo.49(2010)20〜33ページ

  2. The Implementation of the Software Framework in J-PARC/MLF,The proceedings of ICALEPCS 2009, 673-675

  3. 物質・生命科学実験施設データ集積・装置制御用システム検討案I、JAEA-Technology 2005-005